薬剤師ユウの『薬膳』

『薬膳』について簡単に解説!レシピなども記事ししていくよ!

【中医学について①】『陰陽学説』って何?基本的な考え方

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こんにちは
薬剤師のユウです。

さて、今回は中国古代哲学の基本概念である『陰陽学説』についてお話しさせていただきたいと思います。

「陰陽学説ってなんだ?」
「なんかカッコいい言葉が出てきたぞ!」

そんなことを思う方も多いかもしれませんね。
実は漫画やアニメでもこの『陰陽』の考え方は応用されています。これは自然界における分野が全て『』と『』に分けられるからなのです。

この考え方は中医学の人体や病気の考え方にも取り入れられています。詳しく見ていくことにしましょう!

 

陰陽学説』とは

中国古代哲学の基本概念として『陰陽学説』が存在します。これは自然界の変化・規則の観察によって出来た考え方で、自然界の全てを『』『』に分けています。中医学の人体組織、その人の体質・生理、病気の症状・診断を『』『』に分け、更に治療・予防に用いる薬も『陰』『陽』に分けて考えられています。

 

陰陽』の基本的な考え方

人は太陽・月・星の動き、変化の規則性を観察し、年・月・日の歴や二十四節気を作りました。この延長上に『陰陽』の基本概念が生まれました。

※二十四節気:月の満ち欠けを基本に一年を24等分し、24の季節・気候を表したもの。
春から夏にかけて春分、清明、穀雨、立夏、小満、芒種
夏から秋にかけて夏至、小暑、大夏、立秋、処暑、白露
秋から冬にかけて秋分、寒霧、霜降、立冬、小雪、大雪
冬から春にかけて冬至、小寒、大寒、立春、雨水、啓蟄

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1 『陰陽』を自然界に当てはめてみよう!

自然界の全てのことは『』と『』に分けられます。では自然界に当てはめるとどういった形になるか見ていきましょう。

』は明るい・暖かいなどの太陽のようなイメージ。『』は暗い・寒いなどの月のようなイメージで考えると分かりやすいかもしれません。

天・昼・春・夏などは『陽』
地・夜・秋・冬などは『陰』

となります。これらは人体や食材、事物にも当てはめることが出来ます。

 
自然
人体 若者 体表 背中 上身 六腑 働き   老人 体内 胸腹 下身 五臓 肉質 津液 精血
食材 温性 熱性 甘味 辛味 淡味     涼性 寒性 酸味 鹹味      
事物 興奮 運動 成長 旺盛 上昇 表面 外向 温熱 功能 抑制 安静 停頓 衰退 下降 裏面 内在 寒冷 物質

2 『陰陽学説』の基本内容

陰陽学説』では自然界の全てを対立制約互根互用消長平衡相互転化という4つの概念で説明しています。一つ一つを詳しくみていきましょう。

【対立制約】

自然界の物事は全て相互と対立の両面性があると考えられています。陰陽に対立しながらも常にバランスを保っています。これが対立制約です。この陰陽のバランスが取れた状態を『陰平陽秘』といいます。

【互根互用】

陰陽は互いに存在し、依存しあっている関係を互根互用といいます。昼があるから夜が存在する。男がいれば女もいる。そういった関係性のこといい、陰陽が互いに助け合わなければ存在できないことをいいます。

【消長平衡】

陰陽は1日、1年の中で変化しています。1日の流れで見ると分かりやすいかもしれません。朝日が登り、陽が成長し、夜になると日が沈み、陽は消失し陰が強くなる。このように陰と陽は常に変動しています。この流れのことを消長平衡といいます。

【相互転化】

相互転化とは、ほかの状態、ほかの物に変化することです。昼から夜に変わる流れや、夏から冬に変わる流れなどのことをいいます。
もちろんパッと切り替わるわけではなく、夜明けや夕方といった転化の境目が存在します。

まとめ

陰陽学説』は自然界を全て『陰陽』に分けます。中医学でもこの概念をもちいて病気の症状などに当てはめて考えていきます。

漫画やアニメでもみられる『陰陽』の考え方。
これを知っておくことで中医学や薬膳学の基本的な考え方をおさえることができるでしょう!

 

それでは今回はこの辺で・・・
薬剤師ユウのブログに立ち寄っていただき、ありがとうございました。 

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【薬膳の基本②】中医学?薬膳学?歴史から見ていこう!

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こんにちは!
薬剤師のユウです!

前回は『薬膳』とは?を大雑把に書かせていただきました。
薬膳の考え方は至ってシンプル・・・健康の維持・増進、病気の予防・治療・回復などを目指す、健康を守るというもの。

今となっては世間に広まった『薬膳
一体どこで、どのようにして生まれたんでしょうか?
初めから身体の良いという食材やその組み合わせが決まっていたとは考えにくいですよね?

さて、それでは今回は薬膳の元の学問。中医学と薬膳薬の歴史について見ていきましょう!

yu-su-ke.hatenadiary.jp

 

中医学薬膳学の起源

中医学・薬膳学は、人々の生活の中で様々な問題を解決したことによって生まれた学問です。
長い長い歴史と共に検証され、取捨選択されて出来たのです。
食材から中薬(生薬)を見つけ、中薬によって医療行為が生まれ、火の使用によって食文化が発展してきました。

○食文化の発展

火の使用が開始される前までは一体、どのようなことが必要だったのでしょうか?
生きていくためには食の問題は切り離せない関係がありました。中国では「茶は体の毒を排出してくれる」という生活の知恵が昔から存在していました。その生活の知恵は原始的な食材による治療法の始まりで、薬膳学のスタートと言っても過言ではないでしょう。

人類が進化をしていく中で、火の使用はとても大きな影響を与えました。生食から火の通った食事に変わったことにより、胃腸の病気が減り、食の質や栄養状態が変わったことにより脳も発達しました。また、調理技術の発展、食材の使用方法の進化・・・これらが食文化の発展に繋がっていきました。

 

中医学薬膳学の歴史

時代ごとに中医学・薬膳学の発展を見ていきましょう!

1 酒と医学

夏の時代(紀元前2100年〜1700年)に農業が発達。この時代から穀物から酒を作り始めました。この酒を作る調理技術が、後の薬酒に大きな影響を与えることになります。

2 中薬の活用

商の時代(紀元前1700年〜1100年)に食材の知識が豊富で食の分野のスペシャリストの伊尹という人がスープから中薬(生薬)を煎じる方法を考案。この流れから薬の作り方にも応用されるようになります。

3 食医制度の創設

西周の時代(紀元前1066年〜771年)には飲食と医療における職が設置されました。これは社会の発展により、飲食や健康を重視するようになった結果です。
その中で食医」という職の人は王の飲食のバランス、四季の食材の使用方法、味の配合を管理する役目を担いました。

4 中医学理論体系の確立

春秋・戦国時代(紀元前770年〜221年)に『黄帝内経』という書物が書かれ、その中には中医学の理論体系の基礎が書かれています。その中でも重視するべきは治療より予防が大切ということが述べられています。食を重視する考え方がよく表れているのが『黄帝内経』です。
病気に対して五気六味(食材の性質と味)による治療効果が述べられています。
※五気六味:五気は寒性・涼性・温性・熱性・平性の5つの性質。六味は酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味・淡味をいう。

5 薬学専門書『神農本草経』登場

漢の時代(紀元前202年〜紀元後220年)に『神農本草経』と言われる中国で最初の薬学専門書が書かれました。この本では365種類の食材・中薬を「上品」「中品」「下品」に分類して説明しています。ではこれら3つを詳しく見ていきましょう。

  1. 上品:毒性なし。長い期間に多量に服用可能。延年長寿の効果がある食材・中薬
  2. 中品:毒性あるもの・ないものがある。病気の予防・虚弱を補う食材・中薬
  3. 下品:毒性あり。長期服用ができない食材・中薬

6 『傷寒雑病論』登場

漢の時代、『傷寒雑病論』という本が書かれました。これは症状を集めて総合的に病気の判断をする診断法の原点になった本です。後に2冊の本、『傷寒論』『金匱要略方論』になり、『傷寒論』では112〜114の方剤(漢方薬)が記載されています。少し馴染みのある葛根湯や桂枝湯などの今でも使われているものの記載もあります。

7 『後漢書』に薬膳の記載

後漢朝(25年〜220年)の歴史を記した『後漢書』という本に薬膳の記載が初めて表れました。薬膳という言葉はこの書籍で生まれたと考えられています。

8 食療法を記載する『備急千金要方』『食料本草』

唐の時代(618年〜907年)に『備急千金要方』という医学書が書かれました。もっとも古い食療法の記述があり、この時代には動物の内臓を用いて人の臓器を養うということが書かれています。食材を果実・野菜・穀類・鳥獣虫魚に分けて治療法が記述されています。
この後、『備急千金要方』を基として食材と中薬を増補し、薬膳の処方を編集し生まれたのが『食料本草』。この本が食療法の最初の専門書になります。

9 食の重要性を説いた『奉親養老書』

宋の時代(960年〜1279年)に『奉親養老書』が書かれました。その本によると「医者が薬をうまく使っても、食による治療には及ばない」と記載されています。食材に関する知識は薬より効果があるということ、食の重要性について認めた書物になります。

10 営養学(中医薬膳学)の専門書『飲膳生要』

金元の時代(1115年〜1368年)宮廷に勤める医師が『飲膳生要』を著しました。これは五味により五臓を調和する話が書かれています。この本は中国で最初の営養学の専門書であり、営養保険に着目し、営養によって病気を予防することを強調しています。

※五臓:肝・心・脾・肺・腎

11 『本草綱目』によって広がる食材による病気の治療

明の時代(1368年〜1644年)薬膳学は中医学の進歩と共に発展と成熟の時期に突入します。この時に書かれた『本草綱目』は食材と中薬を水部・穀部・菜部・果部・禽部・獣部などに新しく分けて、今まで以上に細かく食材を用いて病気を治療することと薬膳の内容が盛り込まれています。
※禽部:鳥類の総称

12 老人のための薬粥の記載がある『老老恒言』

清の時代(1644年〜1911年)に『老老恒言』が書かれました。この本には老人のための薬粥の献立と作り方が収められていて、上品の粥36種、中品の粥27種、下品の粥37種が記載されています。また、粥を作る際は土鍋を使うように勧めている本になります。
土鍋はゆっくり加熱できるので有効成分を十分に引きだることができることに加えて、冷めにくいということから推奨されています。金属のものは金属成分が溶け出して、食物の成分を変質させてしまう可能性があるため推奨されていません。

13 温病学説の発展

同じく清の時代に温病学が発展。これにより中医学の臨床は更に充実しました。
※温病学:発熱や発疹、赤痢などの伝染病に関する学問。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ちょっと歴史の話で退屈に思う人も多かったのではないでしょうか?
とはいうものの薬膳の話はこの歴史があってこそのことであり、知っておくに越したことはないのかなと思っています。
長々と中医学と薬膳学の歴史について触れていきましたが、こういった歴史の積み重ねによって今の漢方・東洋医学があり、薬膳があるわけです。

今回は難しい本の名前が沢山あったのでそれぞれの著者についての記載は控えさせていただきました。もし興味あればコメントください。

 

それでは今回はこの辺で
薬剤師ユウの薬膳に立ち寄っていただき、ありがとうございました。

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【薬膳の基本①】『薬膳』ってなに?歴史と特徴

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こんにちは!
薬剤師のユウです!

唐突ではありますが『薬膳』をご存知でしょうか?
最近ではファミリーレストランでも『薬膳〇〇』などのメニューもちらほら見かけるようになりましたね。

そんな『薬膳』ですが一体なんなのか・・・どんな人にオススメなのか?

「健康的な食事を意識したい」
「今後の病気の予防を意識した食事を摂りたい」

という方、必見!

 

今回は薬膳』の歴史と特徴について解説していきます。

 

薬膳』とは

①薬膳と一般料理の考え方

薬膳とは私生活で普段口にしている食事とは考え方が異なります。考え方として『健康を維持し、病気を予防する目的を持ったもの』です。

中国伝統医薬学(『中医学』と言われているもの)を基礎として考えられている料理なのです。

②薬膳の基本 

薬膳とは先ほど述べたように健康を維持し、病気を予防するものです。薬膳を作るにあたって臓腑(五臓六腑)、要するに内臓含めた身体の働きに合わせて、食材・中薬(生薬)を用いて、体のバランスを整え、健康を守る料理です。

※中薬:効能がある自然界の植物・動物・鉱物・海産物のこと

 

中医学』と『薬膳学』の概要

薬膳は中国の古くから伝わる中国伝統医薬学中医学)に基づくものです。
ちょっと小難しそうな話にはなりますが、中医学・薬膳学について簡単に説明します。

中医学とは

中国では昔から哲学・天文学・地理学・文学等に密接に関連する高度な文明を築いてきました。そのひとつに、人体の生理・病理、病気の診断・予防・治療に関わる学問中医伝統医薬学中医学)と言います。

日本では漢方医学・東洋医学だったり言われていますね。もしかしたらどこかで耳にしたこともあるかと思います。

※漢方医学・東洋医学:中国から伝来した医学をもとに日本で独自の発展を遂げた医学

薬膳学とは

薬膳学とは中医営養薬膳学の略称です。こらは中医学に含まれる内容になります。食材や中薬をもちいて、健康維持・増進、病気の予防・治療・回復を目指す学問のことを言います。

※営養:食物から養分を摂取後、消化⇨吸収⇨体内利用までの全過程をいう。栄養に少しだけ医療のニュアンスを結びつけた言葉

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
薬膳の考え方は至ってシンプルです。

要するに薬膳とは・・・

「食事を通して健康的な生活を維持・増進しよう!!」

って考え方なんですね。

今回はすごく簡単な説明をさせていただきましたが、次回はもう少し・・・もう少しだけ掘り下げて記事を書かせていただこうと思います。

 

薬剤師ユウの薬膳ブログに立ち寄っていただき、ありがとうございます。
それでは今回はこの辺で・・・

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